設立趣旨

 設立趣旨 十年一昔とはよく言ったものです。  私たちが子どもだった頃、学校の先生に「校内で大人の人を見かけたら、ちゃんとご挨拶しましょうね」とよく言われたものです。恥ずかしがりやだった私は、それが苦手でなりませんでした。知らないおばさんに「こ、こんにちは」とはじめて挨拶した時、おばさんが笑顔で「こんにちは、挨拶できてえらいね」と声をかけてくれたことを今でも忘れることができません。

 大人になった現在、母校を訪ねてみると、校門は閉まっていました。付属池田小学校事件があって以来、大人は学校に入りにくくなりました。あいにく私の姿を見て挨拶してくれる子どもはいませんでした、今の子どもはどこで挨拶することを学ぶのでしょうか。  私たちが子どもだった頃、友達と遊ぶ約束をするにも、家に電話をかけて受話口で友達のお母さんに挨拶をしなければなりませんでした。「○○と申しますが、××くんいらっしゃいますか」という大人に対する言葉づかいを、手汗をかきながら使ったものです。

 大人になった現在、小学生は携帯電話をもっています。友人と直接つながるので、「俺やで、ひま?」と会話が始まります。子どもの監視のために携帯を持たせていても、子どもは自分の都合が悪い時、電話には出ません。子どもに電話を持たせることで、子どもの交友関係を知る機会を失い、「××くんってどんな子?」というような親子の会話すら少なくなってきています。

 現在、子どもを守るためには校門を開けておくことはできませんし、もはや生活に欠かせない存在となった携帯電話をなくすことなんてできません。しかし、いくら社会が変化しても、大切なものは変わりません。言葉づかいや礼儀、敬重の念を子どもに伝えなければならないのは、いつの時代も同じです。  私たちは「大切なもの」を子どもに伝えるため、NPOとして学校と連携し、保護者や地域の人たちとともに世代を越えた幅広い交流活動を行っていきたいと思います。戦争体験やテロの話を直接子どもたちに聞かせる、農業体験教室の開催や、キャンプなどの野外活動指導、物作り体験学習、スポーツ教室・・・私たちが行おうとしているこうした諸活動のすべての場面を、人と人、大人と子どもとが触れ合う教育の機会として捉えなおし、地域社会全体で学校教育を支援したいと考えます。

 子ども会や自治会がなくなり、核家族化が進行して、子どもが親以外の大人に接するという大切な教育の機会は、気づかぬうちに失われつつあります。子どもを取り巻く地域社会全体を教育環境として捉え、学校並びに各種教育機関の教育活動を支援していきたいと思います。私たちの活動の目的に賛同する誰もが参加でき、かつ持続的な活動の母体を構築するためにここに特定非営利活動法人日本学校教育支援協会(Japan Association for Supporting School Education )JASSE(ジャッセ)を設立します。